パリで寿司は食べない。

日記 ,

パリで寿司は食べない。
パリまで来て寿司なんぞ食えるかい、という気分ではなく、折角パリに来たのだから、出来るだけ多くのフランス料理を食べたいからである。
しかし今回、ひょんな縁があって、すし屋に出かけた。
人肌の酢飯がうまい。米の甘みに酢のうま味がなじんで、固さもいい。
握りの中では、赤身がよかった。
きめ細やかで滑らかに歯が包まれ、ほのかに鉄分の香りが立ち上る。
ひかれた煮きりの量も、酢飯とのバランスもいい。
一方ラングスティーヌの握りは、車エビより野性味とたくましさがあって、それが酢飯と懸命になじもうとしている姿が、いじらしかった。
今年初めて一つ星を獲得した「SUSHI B」 花田雅芳さんの握りである。
「すめしがおいしかったです」と言うと、花田さんはまるめがの奥の誠実そうな目をほころばした。