神谷町「デプスブリアンツァ」

ハムカツ食べたい。

食べ歩き ,

2月のマッキー無茶振り会は、一年の中でも最も無茶ぶりである。
なぜなら、僕ともう一人のおじさんリップルさんの誕生月であるので、その二人の好物を作って欲しいというお題を出すからであった。
それはまったくイタリア料理ではない。
ハムカツ(厚いの) 、エビフライ、ちくわ磯辺揚げ、チキンライスにオムレツ、鶏肉のチョコレートソース 河豚と河豚白子のフリット 白菜という振りであった。
ハムカツ、エビフライ、ちくわ磯辺揚げ、チキンライスという、いかにも昭和おじさんの好物は、過去も投げて作ってもらっている。
だが思うのは、想像をいい意味で裏切ってくることであった。
相当頭を悩まし、試行錯誤の上に作られるのだろう。
だがいつも「こう来たか」と、想像と期待を超えてくる。
今回の一番の驚きは「ハムカツ」だった。
なんと愛農ナチュラルポークのばら肉でハムを作り、それをバーガー仕立てにしたのである。
ハムだけをまず食べた。
ああなんときれいな味だろう。
脂が締まりながらもすうっと溶けていき、余韻が全くしつこくなく、甘い香りだけが口に残される。
これを分厚く切ってフライにしちゃうのである。
もう想像だけでいやらしい。
ブリオッシュはオレンジを練り込んで焼かれ、ハムカツの下にはトマトを煮詰めたものに白味噌を合わせたソースを塗り、ハムカツの上には、辛味大根と自家製塩ポン酢を合わせたものを少しだけ載せ、椎茸にフォンドゥータソースをかけたものが添えられていた。
小さいバーガーを食べれば、ほんのり甘いパンの下から、フライの香ばしさとパン粉の食感が現れ、ハムのきれいな味わいが広がって口を占拠し、それをトマトの旨味がそっと支え、ポン酢の酸味がアクセントする。
そして喉に落ちる刹那、ふっとオレンジが香って、脂の甘い香りと手をつなぎ、エレガントが生まれる。
やられました。
ハムカツに色気を醸すなんて。
来年も頼んじゃうぞ。
写真4枚目は2021年時のハムカツ。
神谷町「デプスブリアンツァ」にて。