ニラそばには、苦い経験がある。
若かりし頃、付き合い始めた彼女と麻布十番の「登龍」でデートをし、名物の「ニラそば」を二人で食べた。
食べ終わりケーキ屋にいって、彼女が「おいしいっ」と、笑ったとき、前歯にニラが張り付いていたのだった、
今ならさり気なく注意するが、そのときはいつか取れるさと何も言わなかった。
だがトイレに行った彼女は気がついたのである。
依頼ニラそばを食べると思い出すので、食べなくなっていった。
だがここの締めは、ピリ辛豆乳冷麺またはニラ塩湯麺の二者択一である。
そこでこんな機会でないと、一生食べることがないだろうとニラそばを選択した。
驚いた。
ニラそばはいつの間にか、こんなにも進化していたのか。
いやこの店だからこそ、おいしいのか。
栃木の上都賀の松田さんが作ったニラが甘い。
今までニラに甘さを感じたことがないだけに、感動した。
その上品な甘さが、丁寧に取られた塩味のスープと出会うと、幸せが生まれる。
このニラなら歯についていても、いや歯につけて帰りたい。
渋谷「オンザテーフルチャイニーズ」にて