トラフグの肉

食べ歩き ,

トラフグの肉、みかわ、とうとうみ、皮のテリーヌは、「噛んで」と囁いた。
淡い味を噛み締めていくと、うま味がぐんぐん湧き出てくる。
甘みも酸味も塩気もなく、純なうま味だけが最後の一噛みまで続いて、顔がだらしなくくずれていく。
たった一粒のケイパーの酸味やハーブソースの香味が、その純なうま味を際だてるとこなんざ、憎いねえ。
「今日のテナガエビは生だろうと思って」
雨が降って、大量の栄養分が流れ込んだ駿河湾で今朝獲れ、夜の食卓に上ったテナガエビは、ねろんと舌と絡み合って、どうにも甘い。
微妙な生臭さと生ニンニクの香りが出会って、どうにもエロい。
二皿目の前菜は、ジビエ盛りあわせときたもんだ。。
真ん中の白き物体は、ブナの実だけ食べてきたツキノワグマの脂刺し。
しっかりとした脂は、噛む喜びがありながら、見る見るうちに口の中で溶けていく。
ただ緩く溶けるのではなく、個体としての威厳は残しつつ消えていく。
その今まで食べた事がない感触は、まさしく熊とのディープキスであり、自我が崩壊していくコーフンがある。
そして、複雑な味わいが次から次へとにじみ出て、自然の神秘に鳥肌が立つ、紋別で獲れたヒグマのフリッタータ。
きれいな味わいから鉄分が攻めてくる、本土鹿のタルタル。
アナグマと猪で作ったコッパディテッサは、様々な食感が口の中で弾け、ツキノワグマのバラ肉の味噌漬けは、ぐっと歯に食い込みながら、凛々しい脂の甘みを舌に流して、またまたコーフンさせるのであった。
「パッソアパッソ」にて。