セクシー甘鯛。

食べ歩き ,

甘鯛は恋をしていた。

艶っぽさがむんっと匂って、鼻腔にしなだれかかる。

旨味がカーブを描いて迫ってくる。

若狭焼が乙女なら、こいつは酸いも甘いもかみ分けて、流し目で誘う姐御さん。

色気にときめき、うーんと唸ったまま、身動きできない。

大阪「柏屋 嘉翠庵」のアミの塩辛に五分間漬け、一時間寝かして焼いた甘鯛である。

中国料理の「蝦醤鶏」がヒントだという。

熟れた塩気と酵素が引き出した妖艶に、すっかり惚れた。

旬は12〜2