スイカのスープをご用意しました

食べ歩き ,

「ご主人様、今日の昼にはスイカのスープをご用意しました」と、執事が伝える。
「そうか、蒸し暑い日にはこれに限るなあ。家族たちも喜ぶぞ」
そんな生活が送りたい。
夏になったら毎日飲みたい。
「趙楊」の「寒瓜保元汤」である。
北宗時代の古い料理だそうで、アヒルの清湯をベースに、朝鮮人参三種 干し山芋 ナツメ、干し銀杏、ハトムギ、アガリスク、松茸をいれて、1時間以上蒸す。
「あはぁ」。
澄み渡るスープを飲めば、充足のため息が出る。
このスープには、なぜかアヒルの滋味がなぜか合う。
淡い味ながら、たっぷりの滋養を舌が察知し、喉に落ちて行くと、本能がぷるっと震えた。
雑味が微塵もなく、地平線の彼方まで澄み渡っているのに、凛々しい。
心に力がみなぎって来る。
スイカの底の方はやや味が濃く、また夢中にさせる魔力が溜まっていた。
そして不思議なことが起きる。
熱々なのに、飲み進んでいくと、体が涼しくなっていくのである。

「趙楊」の夏の宴、発酵をテーマにした全料理は、別コラムを参照してください