新橋「味享」のご飯は、「京味」譲りの「鮭ご飯」である。
家でもできる日常のおかずを、プロの目利きと技で、ハレの場に引きずり出す。
それこそが、「京味」の真骨頂ではなかったか。
白ご飯をいただいていると、井上さんが、脂がのった鮭をほぐし始める。
ごくん。
ほぐした鮭を、炊きたてご飯の上によそり、カリカリに焼いた皮を二枚、天に飾る。
皮は、1センチ3センチの細切り同サイズに、切り揃えられていた。
茶碗を手に取って掻き込めば、鮭の豊満な脂が舌に広がり、無垢なご飯が受け止める。
最上質な鮭と吟味された米が出会う、至福の時間に目を細める。
時折「カリリっ」と音を立てる皮が、「もう一膳食べる?」と、囁きかける。