コラボレーション。

食べ歩き ,

コラボレーション。
言葉ではひとつですまされるけど、実は大変むずかしい。
一方の個が出すぎると他方が消え、片方か両方が遠慮し合うと、つまらないものになってしまう。
要はきっと、相手への敬意ではないだろうか。
相手の作品に対し、正確な洞察力と理解力で敬意を払い、高い技術でコラボレーションされた作品は、新しい宇宙を生み出す。
昨夜がまさにそうだった。タイ料理研究家の鈴木都さんとイタリア料理の鵜野秀樹さん。タイとイタリア。どう考えても離れているよね。
しかし鈴木さんの作った料理に、鵜野さんがタクトを一振りすると、あら不思議、元の料理の魅力はそのままに、未知のおいしさが生まれる。
例えば葉で包むタイの前菜、ミャンカムは、生姜、赤玉葱、ナッツ、ココナッツなどの香りや食感が、葉の爽やかさの中で響きあう。
熱いタイで、食欲を呼び起こし、口の中に涼風を送り込む。
ここにイタリアンパセリやデイル、ライムジュースを練り込んだ、鵜野さんのチーズを加えて食べれば、どうだろう。
葉の苦み、ライムの酸味がぐんと浮き上がり、遠くシチリアの風が吹くではないか。
ああ、面白い。
甘酸っぱく優しい香りが鶏と合う、ガイヤーンに沿えられた、バイマックルとレモングラス入りサフランソース。
淡い調味で米の香りとうま味が生きたカオパッに、卵スープを合わせれば、笑いが止まらない。
驚きの8皿。
小さな奇跡が宿った夜だった。