こんなにエレガントなベシャメルソースには、出会えない。
しかもエレガントでいながら、ご飯が欲しくなる、庶民力がある。
昨日の無茶振りは、「僕ともう一人のおじさんの誕生月だから、大好きな洋食を作ってくれ」であった。
グラタンやカキフライ、グリルチキン、洋食風キノコとベーコンのスパゲッティなど色々無茶振りをした。
その中で出てきたのが、このグラタンである。
具は、あえて市販のハムの薄切りで、アンティーブを巻いたものである。
普段薄力粉を使わない奥野シェフが、わざわざ買って作ったベシャメルに、ホワイトマッシュルームの出汁を加え、グリュエールとマジアクリをかけて焼き上げたものである。
一口ソースを口に含んで、崩れ落ちた。
どこまでも滑らかなソースには、マッシュルームの旨味が溶け、旨味の幅が優雅に広がる。
二種のチーズの旨味はアクセントになり、おそらく市販ハムのちょいと下品な旨味も溶け込み、上流階級と庶民層の両方を取り込んだ、カオスが生まれている。
名前の元になったというルイ14世の料理長や、オルレアン公の執事でさえ、舌をまくに違いない。
優美な気分になりながらも、鼻息が荒くなる。
その二律背反の気分に翻弄されながら、夢中で食べ終えた。
奥野シェフ。
願うことなら、この大きな一皿を、僕一人で食べたいなあ。
「ラ・ブリアンツァ」の料理は 別コラムを参照してください