艶かしい天ぷら

艶かしい天ぷらに出会った。

3キロだという見事なサワラは、塩をして寝かされ、分厚く切られ、衣をつけられ、揚げられた。

油から引き上げられると、真二つに切られ、しばし横たえられる。

余熱で、じわじわと中心まで火が入り、表面にうっすらと汗をかき始める。

その瞬間、箸で取って皿に置かれ、目の前に運ばれた。

慌てて食べる。

 

ああなんといやらしい。

まだ生を感じさせる、しなやかな肢体の食感がありながら、香りを膨らませている。

まだ命の躍動を残しながら、火が通って、甘みを増している。

歯は身肉に吸い付いて、バレリーナのしなやかさで舌の上に広がっていく。

噛んではいけないものを噛んでしまった禁断がある。

いたいけなものが色香を灯した、危うさが揺らめいている。

だから、口腔内の粘膜に甘え、舌にしなだれゆく。

とてもエロい。

「たきや」の全天ぷらは、別コラムを参照してください