鳥羽「太助」

ウニの殻にうず高く盛られている。

食べ歩き ,

丸い姿は愛らしく、オレンジ色の手毬でもある。

それは、鳥羽で長年海女を務め、引退した80数歳のおばあちゃんが作った焼きウニだった。

ガゼウ二を殻に盛り上げて詰め、焙烙で焼きあげる。

完全球形となった仕事が芸術品である。

食べれば雑味が一切なく、澄んだウニのうま味だけがどうっと押し寄せては消えていく。

すかさず燗酒で迎え撃ち、陥落した。