かつて僕は、アジフライを小馬鹿にしていた。魚フライ仲間では、エビフライほどご馳走感がなく、白身魚ほどには、品が足りない。
ご飯喚起力も弱く、肴としてもインパクトがない。
だから定食屋や居酒屋では、あまり頼むことがなかったのです。
でも「きく」で改心いたしました。
小アジのフライは、カリッと軽快な音を響かせ、アジの香りが口いっぱいに広がっていく。
軽く干したアジは、うまみが凝縮して、小さいながらもアジの尊厳に満ちています。
僕はいつも一人二枚割り当てで注文し、出されたら、すかさず尻尾を手でつまんで、三角形の角にかじりつく。
ソースも塩もかけません。
二匹は瞬く間です。
「おかわりしようよ」という提案を、「いや、もう少し食べたいと思う量がいいのだ」と制しておきながら、小一時間したらまた頼む。
その後も都合三回頼む。
揚げ立てが食べたいのと、ほろ酔い加減で食べる味わいが、またいいからです。
都合6匹を食べるのですが、許されることなら、いつか10匹、5回に分けて頼んでみたい。
どなたか銀座で一緒に、10匹いきませんか?
銀座「きく」
