たった一人のフレンチである。

食べ歩き ,

たった一人のフレンチである。
手書きされた黒板メニューに、鹿児島熟成和牛ランプと鹿児島和牛リブロースがある。
リブロースをお願いするとシェフは、骨つき塊を出して脱骨しだした。
カウンターワンオペのフレンチにて、注文ごとに脱骨する店が、ほかにどこがあろうか。
もうこの光景だけで気に入ってしまった。
しかもである。
その脱骨している肉は、どこか見覚えがある。
もしやと聞けば、サカエヤの肉ではないか。
ふふ。
前菜の「トマトのマリネ」は、フェタの軽いコクとレモンジュレの酸味、オリーブの塩気を合わせ、それぞれの量によるバランスが綺麗である。
続いて「ウニのパンペルデュ」は、自家製ブリオッシュの塩気とウニの甘みが溶け合う。
「海老とブッラータ」というそっけない名前の皿は、ソテ仕立ての海老と海老殻のソースに、冷たいブッラータが添えてある。
海老ソースの濃い味をいなすように舌に滑り込むブッラータの優しさが、いい。
魚料理は、スズキのロティとチョリソを加えた「特製ブイヤベース」である。
特製と名乗るだけあって、海の豊穣に満ちた味わいがエレガントで、美しい。
そしてリブロースが運ばれた。
噛むごとに、気分が上気していく。
鼻息が荒くなる。
焼き具合も上出来である。
盛り合わせの野菜が力強く、「肉も良かったけど、野菜もすごく美味しかった」と伝えると、嬉しそうな顔になって」はい。野菜にこれからもっと力を入れていきたいとおもっています」と言われた。
さてコーフンの後は、甘い夢で終わろう。
「ヘーゼルナッツのプラリネとライムのミルフィーユ」である。
よく焼かれたフィユタージュとヘーゼルナッツの香ばしさ、そしてライムの酸味が溶け合い。
ひとときの幸せを締めくくる。
ああ、近所に住んでいる人が羨ましい。
浅草「エタップ」にて