そばは生き物だと思う

食べ歩き ,

そばは生き物だと思う。
刈り取られ、粉々にされ、混ぜられ、練られ、茹でられてもなお、生きている。
新潟と茨城のブレンド外一は、優しく舌と鼻腔に切り込んできて、つゆと馴染もうとする。
秩父在来、栃木、北海道のブレンド外2は、打ってから二日間熟成されている。甘さも香りも肩が丸く、しなやかな甘みがにじみ出て、つゆとは、すうっと馴染んでいく。
茨城金砂郷常陸秋蕎麦10割は、蕎麦特有の草の香りとかすかなえぐみの中からじわりと顔を出すたくましい甘みがあって、つゆの味を深くする。
さらに実の状態で4年熟成させたという、手刈り天日干し秩父産の10割は、心を撫でるような優しい甘みが口の中を滑る。
そしてのみこもうとした刹那、青々しさと甘さが入り混じった、モラトリアムの感情に似た、もどかしい香りが漂って、切なくさせる。
そばは生き物だと思う。
菊谷「大塚別邸」の粋な時間の過ごし方は別記にて