その店は路地にひっそりと佇んでいた。

食べ歩き ,

その店は、路地にひっそりと佇んでいた。
四角いガス台、スリットが開いた鉄板という昔ながらのスタイルながら、肉の厚さも大きさもほぼ同寸で、誰が焼こうが焼きムラができない配慮がなされている。
さらにミノは細かい隠し包丁が入れられ、貝のような特有な食感は生かしつつ、食べやすくされている。
レバー焼きは、前歯が噛みしめる喜びを味わえるように、ほどよい厚切りにされ、タンは当然ながら冷凍ではなく、適妙な厚さに切られている。
すべての焼肉は、醤油ダレか塩ダレが選べ、どちらもくどさのない、すっきりとした味わいである。
値段も上のカルビとハラミ、タン以外は千円以下と安い。
並のカルビは肉の香りと味の深さがあり、キムチは発酵が効いた心地よい酸味があり、スープ類ご飯も上出来である。
どこの街にでもあるような焼肉屋の外観ながら、丁寧な仕事の確かさが光っている。
こういう店に出会うと、なんとも嬉しい。
僕はタンをじっくり焼いて、余分な脂を出し、白髪葱を乗せて一味を振り、レモン汁を2滴ほど垂らして、頬張った。