街の中華としての格

食べ歩き ,

赤坂「珉珉」は、街の中華としての格を守っている。
気取らず、庶民的な値段で提供し、料理は素早く運ばれ、こだわりなどという野暮な言葉は使わず、丁寧な仕事を自慢もしない。
例えば肉団子を頼むと、「少しお時間いただきます」と言われるが、それは注文後に肉をよくよく練って団子を作り、揚げるからである。
甘酢あんに逃げず、素のままの揚げたて肉団子は、噛んだ途端から肉の香りが爆発して、笑みを呼ぶ。
例えば焼きそばは、特注の平打ち麺を使い、そのモチっとした食感と髭なしもやしの痛快な食感が交差する。
そして名物「ドラゴンチャーハン」の影に隠れた名品が、「カレーチャーハン」である。
パラリと炒められた米一粒一粒が、油とカレー香をまとっている。
カレーの香りが強すぎず、かといって弱すぎず、ここという一点で決まっている。
余計な具が一切なく、ごまかしも甘えもなく、米と卵とカレーの魅力に集約して、実に潔い。
それこそがこの店の矜持なのである。格なのである。
だから優しい。
食べ飽きることがない。
どんなに料理を食べた後でも、するすると入ってしまう。
このてらいなき炒飯を、大好きな人たちと2016年最後の外食にできたことを幸せに思う。