神戸「串ぐし」にて

こんな店が近くにあったら。

食べ歩き ,

<神戸ディープシリーズ6弾>

その店は夕方の四時半開店だというのに、平日でもすぐ満席となっていた。

食べログでは3.24なので、よそ者はいない。

やっているのはご夫婦二人で、旦那さんが料理をされ、遅い時間にバイトが来るまでは、奥さんが一人でサービスをされている。

席数は20近くあるのに、手書きのメニューには、料理が六十種近くも書かれているではないか。

しかもほとんどが一読しただけではわからない、独創的な料理である。

満席の客を待たすことなく、淡々と料理を仕上げていくご主人の能力が、半端ない。

またどの皿も、盛り付けが工夫されている。

これだけ忙しいのにもかかわらず、大皿で盛り付けてくる。

見ていると、仕込みは最低限のようで、常に魚や野菜、肉を切られている。

この店もまた、お客さん本位なのであった。

「新物ホタルイカと分葱の酢味噌」が運ばれれば、サラダですかという斬新な盛り付けで、食べれば理にかなっている。

これまた盛り付けに工夫のある「アボカドと山芋の生春巻」は、アボカドの硬い黄色い部分と長芋を細切りにして、アボカドのつぶしたものと合わせて、米皮で巻いてある。

食感の妙が楽しいが、ウチでやてもうまくいかないだろうな。

「イタヤ貝パクチーサラダ」は、魚醤、レモン、パクチ、茗荷,赤パプリカ

揚げワンタン、玉ねぎ,ナッツが入っていて、それぞれのバランスがいい。

「豚足と平春雨のエスニック風四川山椒やわらか煮」は、トロトロになった豚足の食感と春雨が同期する中で、山陽が非リリとアクセントする。

そして、「赤足えびのフライ」の、車より強い甘みに惚れ、「トルティーヤのアンチョビと青唐辛子のピザ」という組み合わせに、大笑いした。

最後は、店名の由来となった、串カツである。

数ある中から選んだのは、新玉ねぎ、赤ウィンナーと青唐辛子、ばさ(ふわ)である。

フワの串カツは珍しい。

でも青唐辛子と赤ウィンナー同様に、串カツにする意味が正しくあって、心を震わせるのであった。

ああ、「和牛あごすじ富山芋のガーリックソテー」や「ミンク鯨さえずりの酢味噌」、「みる貝とつぼみ菜のネギ生姜ソース炒め」も食べたかったなあ。

お値段は二人で飲んで食べて、約5000円。

店を出て、誰もが思うはずである。

「ああこんな店が近所にあったらな」と。