こんなウニは初めてである

食べ歩き ,

こんな不思議な思いでうにをたべたことはない。
噛むとそのウニは、存在しなかったように溶けていく。
甘い。

甘いがしつこくない。
気品のある甘さの記憶だけを残して消えていく。
その時である。
口の奥で、喉のあたりでそよ風が舞う。
ほのかな香りが立つ。
青草? そうではない、海藻の香りである。
それも海岸に打ち上げられたそれでなく、海の中で光を浴びながら育っている海藻の香りのように思われた。
こんなウニは初めてである。
しかものその香りの奥に、まだ解明できない香りがある。なんだろうと記憶を紐解く。
幼く切ない甘みと青みを帯びた香りだろうか。
17.8の女の子のうなじの香りがする。
男の心を濡らし、どうにも切なくさせる香りがする
戸畑「照寿し」の夏の逸品。全料理は別項で