炒飯の四面楚歌

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実は、冷やし中華を食べようと思って店に入った。
ところが前後左右、炒飯である。
炒飯の四面楚歌である。
「龍朋」には、25のメニューがあるが、みな炒飯しか頼んでいない。
猛暑にかかわらず、炒飯である。
サラリーマン四人組も、大学生も、女子2人も、炒飯をかきこんでいる。
そのため、注文を取りに来た店員に、思わず「炒飯」と言ってしまった。
冷やし中華を食べようと思っていたのに。
数えてみたら、24人の客中、22人が炒飯を食べている。
この店は炒飯マニアが集まる店か?
否。
それほど個性的なのか?
否。
麻薬でも入っているのか?
否。
具が豪華なのか?
否。
テレビで紹介されたのか?
否。
周囲一キロ圏内に、中華料理屋がないのか?
否。
おそらく昼だけで百数十食、炒飯が出ているのに違いない。
その勢いに押されて、冷やし中華が頼めなかった。
これだけ頼む人が多ければ、いちいち炒めてなんかいられない。もうすでに炒めてあるのだろう。
頼んで、45秒で運ばれた。
さてその炒飯は、どこにでもあるようなフツーの炒飯で、具は、チャーシュー、ねぎ、卵以上。
それなのに人は、この店の炒飯に恋い焦がれる。
パラパラではなく、しっとりとしているのは、純日本的だがが、しょうゆ味を効かせた、焼き飯ではない。
美味しいが、特別にという感はない。
そのフツーさに魅了されるのかとも思うが、この店でなくとも、どこにでもありそうな炒飯である。
僕はまだ、その理由がわからないまま、食べ終えた。コメ一粒残さず食べ終えた。
あれほど冷やし中華が食べたかったのに。
(しつこい)。