こういう店は困るなあ。

食べ歩き ,

こういう店は困るなあ。
あれもこれも頼みたくなっちゃうじゃないか。
頭の中のもう一人の自分から「落ち着いて」と言われてしまう。
塩焼きが、生秋刀魚に鰆、ブリかぶとに丸アジ、イサキにカマス、たまめに甘鯛、鯖に平アジ、そしてアジの干物、煮魚がカレイにアラカブ、たかばに鯛アラ、キンメに鯖ときたもんだ。
まだあるよ。銀ダラにブリの照り焼き、ゴマ鯖に鯛ゴマ、カツオのたたきに鰯梅肉フライ。
魚だけじゃない、とんかつにゴーヤチャンプル、鶏の南蛮もうまそうなのである。
さあ困ったどうする。
悩んだあげく、アラの仲間のたかばの煮つけを選び、なす味噌炒めにポテサラをと飲む。
ほんとはきんぴらもゴマサボも、玉子焼きも頼み高かったなあ。
でも嬉しくなってビールも頼んだ。
「先生」と主人から呼ばれるとなりの常連は、同じたかばの煮つけ。
一口食べて「うぅ〜ん」と唸った。「ふふふf」。
後ろの母息子連れは、鯖塩にサワラの塩焼き。
サワラの塩焼きはなんと、小学三年生の息子の方だ。
「おや息子さんが食べるとね。渋かね」と、ご主人嬉しそう。
しかしこれだけ魚を揃えながら、全てアラミニッツ。
注文が入ってから焼いて煮る。
さあいよいよ私の出番、続々と運ばれる。
「煮汁に魚のうま味が出てるから、最後にご飯にかけて食べると言いよ」。
「カツオのタタキのポン酢は浸けてしばらく経ってから食べるとなじんで、うまいよ」。
「ゴマ鯖の汁も最後にご飯にかけるとうまいよ」。
「今日の鰆は脂のってて、うまいよ」。
料理ごとに一言そえて出す。
定食屋は、こうじゃなきゃ。
たかばの煮つけは、爆ぜるような身で、口の中で甘みを滲ませ、茄子味噌は甘みに逃げてなくておいしい。
どうやら常連は、卓上の高菜漬けでお茶漬けにして締めるのが流儀らしいが、僕は煮つけ。煮汁をたらりとご飯にかけて楽しんだ。
こんな店が、ファッションビルの地下、東京で言えば109のようなビルの地下にあるというのも博多の底力だろう。
しかし昼から3千円以上食べてしまった。
そんな自分が愛おしい。