「もう5年間も毎日削っていたので、筋肉がついちゃいました」。
そう言って、かつおちゃんは笑われた。
鰹節をごはんにかけた、いわゆるねこまんまの素晴らしさを知ったのは、ここだった。
今日は.枯節と荒節の二つを目の前で削り、炊き立てのご飯にかけてくれる。
枯節は、もうその香りだけでご飯がいけてしまう。
途中で塩かけて、旨みが増したが、それでも塩がいらないと思ったほど、純粋な香りが愛おしい。
卵かけご飯にしても、醤油をかけても、その香りと旨みは隠れず、舌と鼻を包み込む。
あまりにおいしくて2膳食べてしまった。
壁には一面鰹節の製造工程や鰹漁、漁師の写真が貼ってある。
「私が死んだ後も、なんとかカツオ食文化を残したい。そう考えた時思いついたのが博物館。だからここをもっと充実させて、ダシ博物館にしたいんです」。
「ダシ博。いいねえ」。
今鰹漁は高齢化し、巻網漁によって大量に獲られて、過格も下落しているため、後継がいない状態だという。
彼女はなんとか後世に鰹文化を残したいと、1人奮迅しているのである。
5年間削っているため、ある程度鰹節の色と硬さを見ただけで、どんな削れ方をするか、どんな味わいになるか、力の入れ具合などわかるようになつたという。
「今年はカツオと泳ぎたいと思って、ダイビングの攻守を受けているんです」。
そう言って、可愛らしい目を輝かせた。
コロナが明けたらカツオ食堂で、カツオ特別料理と鰹節削り体験をしたいと思う人