広い厨房に入ると、25人のおばあちゃんたちが料理をしていた。
ここはバンコクから1時間ほど車を走らせた、田んぼの真ん中に、古民家を移築して、作られたレストランである。
都会とは違う速度が流れる土地で、ゆったりと郷土料理をいただく。
どれだけ贅沢なことだろう。
そのことを皆知っていて、世界中から予約が入る。
土日しかやってないそのレストランは、一年分の予約を、一月頭に受けるが、8秒で一年分埋まってしまうという。
特別に月曜日に、我々だけのために店を開いてくれた。
その名前は、Ruen Janung Ayutayaという。
25人のおばあちゃんたちは、5つに分かれた厨房で、得意料理を作る。
代々彼女たちの家に伝えられた料理である。
一皿目は、野菜と揚げた魚、天ぷらを盛り合わせた前菜だった。
真ん中に二つの海老味噌ディップ、辛く酸っぱいアユタヤ風と、甘めのチョンブリー風である。
野菜は、空芯菜に、アカシヤオムレツに、ハミングハートツリーの花と茄子の天ぷら、魚はシー マッカラヴだという。
ペーストの酸っぱ辛さに、思わず白ご飯が食べたくなったが、我慢した。
なにしろ、これから14皿も来るのだから。
以下次号。