あん肝の味噌漬けは、

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  • あん肝の味噌漬け

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あん肝の味噌漬けは、味噌の味が出すぎずに熟れて、肝がどっしりと落ち着いた味わいになっている。
わさびの酒粕漬けは、酒粕の香ばしさとわさびの爽やかな香りが馴染みあって、無くなっていくのが悲しくなる。
ヒラメの縁側と尾っぽに近い身のぬた味噌和えは、ぬた味噌の甘みとヒラメのうま味が丸く抱き合って、体の力が抜けていく。
ヒラメを昆布締めした昆布の佃煮は、ヒラメのエキスがほんのり感じられるような味付けで、それでいてしっかり甘辛いのだからまいっちゃう。
どれも酒が進んで、たまらない肴である。
「おいしいなあ」といつものようにつぶやけば、
「だってこれらは、俺が酒飲むために作ってんだから、おいしいのは当たり前」と、嬉しそうにご主人が笑う。
それゆえどれもお客用の料理ではなく、メニューにはない。
僕も数年間通って、ご主人に気にいられ、ようやく出してくれるようになった。
通い始めて、はや20数年。
東京で個人的に好きな店を三軒選べと聞かれれば、僕は間違いなくこの、古き良き東京の仕事が残る料理屋を選ぶ。

たまる