またやってしまった。

食べ歩き ,

  • 6a

またやってしまった。
「キッチンパンチ」の看板を見かけた途端、なぜか店に入っていた。
座って、「オムライスのハムカツとポテサラのせ、ビール中瓶、乗せポテサラ先に」と、なんの迷いもなく頼んでいる自分がいた。
やってしまった。
そんな悔恨を、パンチのオムライスは優しく抱きしめてくれる。
卵三個は使ったであろう薄焼き卵は、薄焼きと呼べない厚さで、ふっくらとチキンライスに覆い被さっている。
「お前のことがなにより大事だよ」と、愛の言葉を囁きながら包んでいる。
だから口に運べば、玉子に歯がくるまれて、幸せな気分になる。
方やハムカツは、油切れよくカリッと揚げられて、分厚いハムが御飯を呼ぶ。
よおし、ソースをたっぷりかけてやるぞ。
オムライスのたおやかさとハムカツの下手が、皿の上で出会うと、僕はどうしようもなく舞い上がって、笑顔になる。