〜コロッケは夢を見る〜
「おお、カニコロッケだ」と、思った。
そんな思わず笑顔になる身近なおいしさがありながら、その実カニコロッケ史上最もエレガントなカニコロッケである。
「トウモロコシの冷たいスープはおいしいです。でもどこもやられているので、違うやり方でおいしさを表現したかった」
京都「cenci」の坂本シェフは言う。
そこで昆布だしと合わせたトウモロコシのスープを葛粉で固め、フリットにし、冷やし固めたものが、中心に鎮座している。
ポレンタのフリットではない。
これがトウモロコシ以上にトウモロコシなのである。
一口食べた途端に、誰もが「ああっ」と言ったまま崩れ落ちる、圧倒的で品がある甘みがある。
そしてそれを蟹とカニミソソースに合わせ、。下に敷かれたサワークリームソースと一緒に食べればなんと。
上質なカニコロッケである。
あえて言えば、夢見心地へ誘うカニコロッケである。
ただその夢だけに終わらせないのが坂本シェフである。
下に置いたヤングコーンのピクルスの酸味や上からかけた黒胡椒の刺激が、全体をこっそり引き締め、あるいはリフレッシュさせて、再びの夢見心地をさらに膨らますのであった。
京都「cenci」の夏を満喫する全料理は、別記にて