「噛め」。肉はそう囁いた。
噛む。噛む。
じわじわり。肉のエキスが流れ出す。
その流入は止めを知らないかのように、噛むほどに口の中を満たしていく。
肉と僕が命のやり取りをしている。 そんな手応えが確かにあって、心臓の鼓動が早まった。 一切れを食べ終わって、筍を食べる。 するとどうだろう。筍の養分が、肉の余韻と呼応する。 出会えてよかったと、叫んでいる。 目を閉じる。 そこには大草原が広がって、牛が草を食んでいる。 こんなことは、他のどんな牛肉でも起こらない。 都会に佇みながら、我々の感覚だけを大地に戻す。 それこそが、ジビーフである。 野に放たれ、自由奔放に生きたジビーフの呼吸である。 言葉である。
京都「なかひがし」とジビーフの出会い。
西川さん、新保さん、ありがとう