口にした瞬間、鳥肌がたった。なんという丸みなのだろう。静かなうまみがひたひたと、小波になって押し寄せ、黙らせる。「トフェイヤ」というピエモンテ地方の料理である。名前は、テラコッタ製の鍋Tofejaに起因するらしい。豚の舌、頬、豚足、耳を、香味野菜とニンニク、白インゲン豆。ローリエ、ローズマリー、セージ、シナモン、クローブ、ナツメグと主に煮込んでいるという。豚のコラーゲンが甘みとなって溶け、豆の優しい甘みと手を結び、スパイスの甘い香りと抱き合う。そうして生まれた新たな甘美が、ゆるゆると舌の上に広がっていく。懐かしい。イタリア人でもピエモンテに住んでこともないのに、そう思った。先人の知恵に敬意を払いながら、丁寧に思いを込めて作られたものは、国を超えて人々の胸に火を灯す。そういうものだ。祖師ヶ谷大蔵「フィオッキ」にて。あっちゃんおいしいよ
「トフェイヤ」
食べ歩き ,