お通しがきらいである。
世には心がこもっていないお通しが多く、なぜこれを食べなくては行けないのか訝りながら、残すのは忍びないので、嫌々食べてしまう。
高太郎やたまるのお通しのように優れた料理ならいいのに、めったにない。
しかもこれからたくさん食べて飲むぞと意気込んでいるのに、なぜお通し代をとるのか。
謎である。
しかし一方で、酒飲みは単純である。
先日も洋食屋に入り、散々何にするか迷った挙句、ハンバーグに決めかけたが、やはりここは立場上カツにしようと決断した。
でもカツ前も楽しんじゃうぞと、空豆と穴子のフリット、クリームコロッケ（各400円）を頼み、ハイボールを頼んで、「カツは後でお願いします」と注文する。
自らのオーダーを一人自画自賛していると、料理が来た。
ハイボールを飲み、空豆を食べて思わず「うまいっ」とひとりごちる。
クリームコロッケ、フリット共にハイボールに合い、一人悦にいっていると
「お酒を頼まれた方には、ズリの塩焼きをおだししています」と、ウェイトレスが小皿を運んで来た。
お通しか？
お通し代がかかるのか。
美味しい肴は酒が進む
二杯目をお代わりした。
すると「もう一品自家製のチャーシューです」また小皿を持ってくるではないか。
ここで確信した。
これは無料サービスである。
心の入った無料のお通しである。
酒飲みは単純だから、こんな小さなお通しでもすごく嬉しい。
飲み終えて、食べたカツがなおさらうまい。
肉がしまって、パン粉の付け具合、揚げ具合も良く、これは上等である。
嬉しくなって、エビフライもプリンも頼んでしまった。
いい店だなあ。
御堂筋ロッヂにて