銀座「はち巻岡田」

「こんばんは」。

食べ歩き ,

野菜の粕煮を食べながら燗酒をやる。
人参を大根を芋をこんにゃくを食べながら燗酒をやる。
一つの一つの野菜の、歯ごたえを確かめながら、燗酒をやる。
時折粕汁を飲み、飲み込まずに、すかさず燗酒をやる。
「こんばんは」。
口の中で出会った粕汁と燗酒が挨拶を交わし、ともに溶けていく。
そのまあるい抱擁がとても好き。
筋肉は弛緩し、背骨は柔らかくなり、心は温められる。
こんな贅沢は他にない。
冬にいただく野菜の粕煮には、慈愛が沁みている。