僕が瀕死の際にあったなら、ひと匙、口に含ませてくれ。

食べ歩き , ポエム

僕が瀕死の際にあったなら、ひと匙、口に含ませてくれ。
黄金色のテリーヌを、そっと唇に滑り込ませておくれ。

静かな旨みを舌と上顎でつぶしていくと、変わっていくんだよ。
味や香りが目覚めだし、豊潤なオマールがあらわれるのさ。
オマールが蘇って、甘く香り、気品を漂わせながら、口の中をたゆたうよ。
どんなオマール料理よりオマールらしく、誇りに満ちて輝き、喉に落ちてもなお、甘美な余韻で酔わすのさ。
白ワインで消したくないけど、飲んでも消えやしない。
いつまでもいつまでも、別れを告げようとしないのさ。
「わたしは生きていたよ」。 
そう唄いながら漂い続ける。


僕が瀕死の際にあったなら、ひと匙、口に含ませてくれ。
黄金色のテリーヌを、そっと唇に滑り込ませておくれ。
命の灯火が、旅立つ命を照らし、この世でに生かされた感謝を湧き上がらせてくれるだろうから。


「コートドール」 「オマールのテリーヌ ダニエル風」。

 

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