「皿盛」と「中華」。   「篠田屋」京都の日常

食べ歩き

「皿盛」。「中華」。「皿盛」。「中華」。
三条「篠田屋」に次々と入ってくる客は、この二つの言葉しか発しない。
しかも席に座る前に、メニューを見ようともせず、どちらかの言葉を発声するのであった.
ここは、京都のうどん屋なので、天ぷらうどんやきつねうどん、親子丼や衣笠丼もある。
しかし実は用意してないのじゃないか。
そう思うほど、店内を埋め尽くした老若男女たちは、「皿盛(カツカレー)と「中華(中華そば)」しか食べていない。
最初にここで皿盛を食べた時、目が丸くなった。
カツの右端が剥がれ、衣しかないではないか。
肉はどこに行ったと探すも、見つからない。
それは、僕の勘違いであった。
肉が薄すぎて、衣だけに見えたのであった。
今日も「皿盛」が運ばれる。
隣の20代サラリーマンは、皿盛の大盛。その隣の50代職人風は、ビール大瓶を飲みながら皿盛。右奥の60代会社員は、皿盛が運ばれるや否や、ソースをドバドバかけて、猛然と食べ始めた.
隣の女子大生2人は、仲睦まじく、中華。その隣の40代夫婦も、仲良く中華を啜っている。
さあ、わが皿盛が来た。
まずはカツを一口食べれば、カリカリと衣が音を立て、薄いながらもほのかに豚肉の香りがある。
次に二切れをカレーに埋め、ヅケとする。
このカレーは、カレーうどんのカレーであり、出汁の甘みとカレーの香りがすんなり混じった、あん仕立てである。
そこにソースをかけてやる。
カツにかければご飯に染みて、カレーに混ざって、下品がキックする.
この下手力がたまらない。
カツは、スプーンで細かく切り(薄いので、スプーンでも、難なく切れるのであった)、カレーの具として馴染ませ、七味をかけ、福神漬けも入れ、後はゴールに向かい、一直線。
「ふうっ」。
食べ終わつて一息ついた時、70代後半の白髪の老女が1人入ってきて、座る前に注文をする。
「にしんそばをください」。
僕は、紛争地帯に舞い降りた白鳥を見た気がした.