マコガレイは、人を馬鹿にしているのかもしれない。
いや正確に言えば、馬鹿にしているのではなく、人間の叡智の及ばぬ場所にいる。
銀座「智映」で思った。
明石浦漁港の通称アマガレイは、身を黄色に染め、切る前から人間を惑わしてくる。
白き、透き通った切り身を噛めば、ほわんと甘みが広がり、さらに噛めば、噛めば、ああ。どうしたことだろう。
たくましい滋味が湧き出て、さらなる高みへと登っていくではないか。
口からいなくなっても、うま味の余韻が消えることがない。
食べた後、10分も20分も続くのである。
そこにぬる燗を流し込めば、再びうま味が膨らむ。
最初に圧倒して消えていく、ヒラメとは違う、したたかさがある。
神秘がある。
食べる我々の度量を図る、命の貴さがある。