二軒目は魚湯

食べ歩き ,

「二軒目は老舗の優しさで」。
看板には80年とあるが、その看板自体が古ぼけている。
店頭で魚湯を作るは、3代目か4代目か。
小さく、粗末な店ながら、隅々まで掃除が行き届いて、これぞ老舗の挟持なり。
丼に魚や具を入れて、スープを注いで出来上がり。
ただそれだけの料理なれど、食べればそこまでに、様々な工夫や手間がある事を知る。
注文せしは、魚肚湯に魚皮湯、肉餃湯。
すると主人の奥さんが、「肉操飯」と「魯蛋」と「油豆腐」は欠かせないというので、慌てて追加注文。
いやあ、驚いたねえこのスープには。

熱々のスープをすすると。うま味が舌を過ぎ、喉に落ち、体の細胞に染み渡っていく。
魚臭さは一切なく、澄んだうま味だけを湛えて、さりげない。
新鮮な虱目魚を使っているらしいが、皮のぬるんとした食感がいい。
そして魚肚。
てっきり胃袋か肝臓かと思ったが、腹身なのである。
脂ののった鮭のハラスの少し淡い味の身が、柔らかい皮とともに入っていると思ってほしい。
ふわりと舌の上でつぶれ、魚の脂ならではのほのかな甘みが広がる。
追加注文の「肉操飯」と「魯蛋」と「油豆腐」もいけません。
味は濃いながらも、調味はほどよく、箸で掻き込む勢いが加速する。
最後は豆腐をつぶしてご飯と混ぜ、ハハハ。
台湾3日間15食の旅、最後の日を飾るにふさわしい、台湾人の誠実が伝わる朝食でした。

「阿川手工魚丸湯」にて