豆と水と塩。
それだけでいい。
それ以上はなにもいらない。
あとは水加減に気を配り、炊き加減に目を見張り、うまくなれと念じ続ければいい。
そうすれば豆が自然に仕事をする。
大地の暖かさを人間に教え、天に向かって伸びんとするたくましさを伝えくる。
一口飲めば、すべての人の心を氷解し、包み込む。
うまさに慣れ過ぎた味蕾は清められ、人間が、人間の本能が欲するところの真が降りてくる。
スープは舌を抱きしめ、上顎に頬ずりをし、厚く温かい手ですべての粘膜を撫でながら胃袋へと降りて行く。
その時我々は知る。
なにが足りていなくて、なにが一番大切であったかということを。
「メゼババ」豆のスープ。