運ばれてきて、茶碗の蓋を開けた瞬間にめまいがして、慌てて蓋を閉じてしまった。
それほどに、濃密だった。
こんなにも濃い松茸ご飯には、出会ったことがない。
味が濃いのではない。松茸の量が多いのでもない。
松茸の松茸たる味と香りが、凝縮しているのである。
もっと嗅ぎたい。だが、嗅いではいけないような、禁断がある。
ただ香ってくるのではなく、鼻の軟膜にしがみつくような、生命への固執がある。
松茸がむせび泣く。
米にからむ。
ごはんが、なんとも艶かしい。
生米から共に炊いたという丹波の松茸は、加熱されているのに、まだ生々しい命の鮮やかさを残している。
松茸の精を宿したご飯である。
その壮絶を生み出したのは、ご主人の敬意である。
山や海への深い感謝と、季節への愛である。
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