年の瀬が押し迫った夜に、蕪をいただいた。
「ふろふき蕪」である。
白き皿に鎮座した蕪に、箸を入れる。
すっと箸が落ちて、蕪が割れ、湯気が上がった。
そのまま柚子味噌はつけずに、口に運ぶ。
うう。
思わずうめく。
これ以上炊いたらあかん。
これ以上炊いたら、柔こうなりすぎる。
蕪は、柔らかくなる寸前のギリギリで炊かれていた。
歯が 蕪の肉体にゆっくりと入っていき。じんわり汁が滲み出す。
精妙な炊き加減が我々へ、蕪の繊維感や繊維に含まれた滋味を伝える。
蕪の生命力を教えくる。
ありがたい。ありがたい。
そう念じながら、一個の蕪を食べ終えた。
皮を剥き、このように丸く、丸く面取りするのも至難だろうし、炊き加減の見極めも難しいだろう。
そう思い、帰り際にご主人に尋ねた。
「そうなんですよ。丸く面取りするのも大変ですが、いかにあの固さ、柔らかさに持っていくか、火をいつ止めるか苦労しています」。
ご主人は、力を込めて言われる。
それは、蕪への畏れと尊さを感じながら料理された人の言葉だった。
金沢「片折」にて。