「頼まれてから、二時間頂きます」。そういわれて慌てて頼んだ。
駒沢「フォルナーチェ」の「ポレンタ・コンチャ」。
皿にぽってりと盛られたそれが運ばれてきた瞬間、心がほぐれた。
なんという優しい香りだろう。あまいとうもろこしの香りが、顔を包み込む。
もうそれだけで笑顔を生むポレンタを、スプーンですくい、口に運んだ。
ふわりと舌に着地した淡黄色の物体が、するりと溶けていく。
「ふふっ」。
笑いを隠せない。甘い香りが鼻に抜け、なんとも温かい、懐かしい甘みが広がり、消えていく。
チースのコクがトウモロコシと抱き合い、完全に一つとなっている。
「ふふっ」。再び笑う。
肥沃な北イタリアの大地と太陽が生んだ豊饒が、生きる喜びを問う。
次はポレンタと、「牛頬肉の赤ワイン煮込み、ペポーゾ」を頼み、ソースとからませながらワインを飲み、人生を語ろうと思う。
閉店