六本木「kobayashi」

バースーの真髄。

1日1甘 , 食べ歩き ,

「さつまいも飴炊き」は、最近見かけることがなくなったが、昔の高級中国料理店では、頻繁に出されていたデザートだった。
甘すぎる点と、駄菓子的佇まいが、ご馳走感を呼ばず、いつしか僕も食指がわかなくなった。
しかし小林さんの「さつまいも飴炊き」を食べたとき、今までのものは、単に飴の甘さだけで食べていたことを知ったのである。
駄菓子的などとんでもない。
この北京料理は、宮廷料理としても作られていたという。
まず皮を剥き、一口大に切るのだが、トーアル(兎耳)という形に、正確に切らねばならない
さらには、切断面を綺麗に切らないと、根菜類は割れることがある。
この時点で、素人にはもう無理である。
フランス料理のポムスフレと同じように、熟練した職人の技がある。
この芋を、120度からゆっくり揚げていく。
宮廷料理なら、黄金色に仕上げなくてはならない。
ゆっくり揚げて,取り出して冷ます。
すると表面が固まり、中からの水蒸気で膨らむ。
うむやはりポムスフレだな。
鍋に、水とサラダ油、砂糖を入れ、ゆっくり混ぜながら120度でカラメル状にし、揚げたさつまいもを戻し入れて、混ぜる。
とりだして、バラしながら仕上げる。
ただこの時の飴の量と芋のバランスが肝要で、芋を揚げている時に表面積を考えて、砂糖の量を調整するのだという。
それによって、芋の一つ一つに、均一に飴がかかる。
出来上がったさつまいもは、白い皿の上で、黄金色の光を放っていた。
「カリリ シャリシャリ」。
齧ると、痛快な音が響く。
飴ではない、芋の甘みが主役である。
砂糖は芋の風味と、形を支える脇役なのであった。
何個でも食べられる。
止まらない。
これは、芋のダイヤモンドである。
輝きが似ているだけではない。
人を魅了してやまない点もまた、宝石なのである。
六本木「kobayashi」にて。