<函館の居酒屋シリーズ第二弾>
前回は、雪道をそぞろ歩いて、たどり着いた。
初秋の「居酒屋兆治」は、何が待つのだろう。
「あっ、マッキーさん、久しぶりです」。
息子が驚いたような顔をして、出迎えてくれた。
横ではお父さんが黙々と仕事をしている・
前回しびれたのは、味がきれいでよどみがないたちのポン酢と、プルプル、ふわふわ、コリリとごっこが歯の間で弾む、ごっこ汁だった。
だが今夜は季節が違う。
刺身は地物のヒラマサと本マグロ、シメサバ、北寄貝をお願いした。
マグロはこのお値段なのに質が極めて高く、ヒラマサは優しい甘みが内在し、しめ鯖はまだ脂が乗っていないサバに対しての締めかたが、穏やかで品があった。
次に「ババガレイの煮付け」と「ギンガレイの塩焼き」をお願いする。
どちらも北海道以外では、あまり御目にかかれない品書きである。
しっとりとした身が濃い煮汁に落ちていくババガレイの、しみじみとした美味さに酒を飲み、高級魚ではないが、肉体が張り詰めてうっすらと乗った脂が舌を掴む、ギンガレイで酒を飲む。
そして最後、酒飲みの行き着く場所は、舐めものである。
すじこを頼み、ちびりちびりと舐めながら、燗酒を合わせる。
こうして酔っぱらった二人のおじさんは、至福の顔になるのでした。