麻布十番「薪鳥新神戸」移転

敢えて困難な道を歩く。

食べ歩き ,

焼鳥を、炭火でなく薪火で焼く,
そのことが、どれほど無謀なことか。
「まだまだです。先が見えません」。
仕上がりを褒めると、店主疋田さんは、とんでもないという顔をして言われた。
炭火に比べて薪火は安定しない。
同じ楢や杉でも、個体差がある。
水分を含んでいるので、皮がバリッと焼き上がらない。
隣に並べた串なのに、火の通りが違う。
「一番難しいのは、塩の落ち方にばらつきがあることです」。
焼く姿を見ていると、串は一切動かさずに、薪をいじっている。
塊肉を焼くならまだしも、小さな焼鳥串を焼くのは、至難だろう。
まだまだですと言われながらも、焼かれた鳥は、芯まで熱く、薪の香りをまといながら鶏の香りが爆ぜる。
他のどこにもない、焼鳥である。