塩漬け発酵させた白菜漬けによる「酸菜白肉火鍋」である。
スープを一口飲んで笑い出した。
練れた酸味の深さが、舌をたぶらかす。潜んだうま味が心を揺さぶる。
さらに腐乳やニラ、ニンニク、芝麻醤等によるタレをぽとりと落とせば、五味がぐるぐると渦巻いて、陥落させる。
「醤猪肉」は、豚の前足を60年注ぎ足してきたつけ汁に浸けて焼き、アニスと山椒、芝麻醤を入れて焼いた「芝麻醤焼餅」に挟んで食べる。
複雑な甘みを持ったつけ汁と豚脂の甘み、餅が放つエキゾチックな香りが共鳴して、たまりません。
「焼茄子」は炒めた茄子だが、口にするとムースのようにきめ細やかで、甘く溶けていく。
そして肉団子、「炸丸子」は、塩だけでつなぎもなしにまとめたもので、ふんわりとまとまった肉とカラリと揚がった衣と対比が楽しい。
そして名物の一つ「松子燻雛」は、つけ汁になんと醤油も紹興酒も使ってないという。
水と少量の砂糖だけであるが、長年の注ぎたしと火加減と鶏や豚の脂によってメイラード反応を起こして、チョコレート色に輝き、我々の舌を喜ばすのであった。