八戸「酔居笑」

食べ歩き ,

「我楽多(がらくた)」「来夢来人(らいむらいと)」「歌酒舎(カチューシャ)」とか、「沙婆羅(さはら)」「織恋路(オレンジ)」「談妃留(ダンヒル)」とか、無理やりな当て字店名に、いい店はないというのが僕の経験である。
だがどこにも例外はある。
八戸で誘われたのは「酔居笑(よいしょ)」という居酒屋だった。
店名からして面白そうだが、危険だという直感が働いた。
だが店主がいい。
いかにも人が好きですという店主がいい。
日本酒を飲んでいて、ハムカツを頼んだ時、これは日本酒じゃないなと
「すいませんハムカツに合わせて、ハイボールください」と、頼めば
「はい! それではハムカツと一緒に出しますね」。
これを言える人はなかなかいない。
こうした調子で気分がどんどん良くなる。
肉どうふの汁をちょいづけしながら食べる塩むすびは、おにぎりと茶漬けの両方の魅力があって、食べる人を鷲掴みにする。
「人参嫌いの人も食べてくれます」という「人参ムーチョ」は、人参細切りとカラムーチョとマヨネースを和えた、コペルニクス的発想の料理である。
さて帰り際に店主がエレベーターが閉まるまで見送ってくれた。
エレベーターが一階に着くと、外には階段で回ってきた店主がカゴを手に持って、すでにまっていた。
「ありがとうございました。おやすみなさい」。
そう言って各人に渡してくれたのは、バブだった。