代々木「高瀬」

旨味の濃縮。天然トラフグの勇壮な味わいに齧りつけ。

食べ歩き ,

「でかい」。

最初にこの唐揚げに出会った時、思わず叫んでしまった。

フライドチキン級の大きさである。

普通ふぐ料理屋での唐揚げは、中骨周りの片身を揚げることが多いのだが、ここは豪勢にもぶつ切りである。

だから箸でつまむより、熱々覚悟で手づかみをし、かじりつくのが正しい。

「カリッ、カリリッ」。

衣が威勢のいい音を立てて弾ける。                                

「衣の食感を生み出すのに1年間試行錯誤しました。今でももっといい方はないか考えています」。

店主高瀬さんが独自で編み出した衣は、他に例がないほど香ばしく、痛快な歯ごたえがある。

そして衣の中から、肉厚でジューシーなフグが現れる。

ぐぐっと歯に食い込み、口の中を甘い汁で満たす。 

ふぐ料理といえば、刺身や鍋を思い浮かべるが、この料理法が一番だという人が多い。

それは、脂質がほとんどない、筋肉質であるふぐの味を生かす、最適な料理法なのである。

そんな唐揚げを、この店はさらに勇壮なる味に仕立てあげた。

この冬に食べたい、ふぐ料理の傑作である。

 

10月から5月、下関や大分を中心に、旨味が乗った大型天然ふぐのコースを、15500円からと、都内では圧倒的なお値打ち値段で提供する。

最後の旨味の詰まった雑炊は、生米から炊く。

抽出されたふぐの養分と米の甘みが溶け合った汁(写真)をまず飲んでから、雑炊を食べる。

その味に心を溶かすは必至。

 

ふぐ

縄文時代から日本人に親しまれてきた魚。

天下の美食家北大路魯山人にして、「ふぐのうまさは、他に優るものなき断然たるもの」と言わしめ、多くの美食家たちを魅了してきた。

10年ほど生き、特に天然トラフグの3年以上が最上とされる。白子も珍重される。