秋刀魚は苦いかしょっぱいか。   赤坂「津やま」

食べ歩き ,

この間、秋刀魚の焼き魚定食をいただきました。

いただいたのは、赤坂の「津やま」という高級割烹。
小泉首相も行きつけだということで有名なお店であります。
そんな割烹なら、キンキやアワビ、目板カレイなんぞをたべりゃいいのに、よりによって秋刀魚をねぇなんて言われそうですが、食べたかったんだからしょうがない。

タベアルキストとしても、下々の秋刀魚と高級割烹の秋刀魚がいかに違うか検証せねばならない、なんてね。
おそらくあたしの人生の中で最高額の秋刀魚定食でしょう。

でも怖いから、値段なぞ確かめられません。

さて、頼んで待つも、店内で焼かれている様子はない。
やがて板さんがおつけを作り、お新香を切り出した。
ちょいと早いんじゃないの、といおうとしたらどこからともなく秋刀魚が登場するんですね。

表の焼き場で、炭火で焼いているっていう。
なるほどそりゃあ、においも煙も気にならない。
でも雨の日はどうするんだろうねぇ。

お見事。
焼きムラなく、パリリと香ばしい皮の上で、脂がじゅじゅっと踊っている。
丸々太った精悍な顔つきの秋刀魚様が、さあどうだい食べてみろぃと迫ってくる。

脂も水分もほどよく落とされて、うまみがぐんとのってくる。ああ秋だねえ。
そんな身を見切って振った、大胆な塩もうれしいじゃありませんか。

新鮮ゆえに、ワタはほろ苦い奥底から甘みが滲み寄る。
身をむしっては、ご飯を掻き込む。
ワタをつまんでは、ぬる燗をやる。
ワタを身にちょいとまぶせば、ご飯が恋しくなる。
日本人でよかったねぇってやつですか。

お新香
ご飯
しじみの味噌汁
酢蓮
おろし
酢橘
谷中生姜
一点の曇りなき定食じゃあありませんか。

一膳ですまそうと思ったけどやめられません。
ちょいと残しておいた身とワタを、熱々ご飯によくよく混ぜて、もらった木の芽をちぎってかけて、一気呵成に掻き込んでやりました。

はふはふ。ぐぐぐ。
ちきしょううまいじゃねえか。

ごちそうさま。
存分にいただきました。

おっと検証忘れちまった。