京都「なかひがし」

僕は君を欲していたんだ。

食べ歩き ,

白味噌の甘みが、凍えた舌を抱きしめる。
喉に落ちいく汁は、隅々へと染み渡り、体をゆっくり溶かしていく。
猪口茸のぬめりが唇を舐め、日野菜の香りが鼻に抜ける。
年末に行われる、火の用心周りの拍子木に見立てた日野菜の茎が、シャクツと弾け、辛味を覗かせる。
次第に温まっていく心を感じながら言ってみる。
「ありがとう。僕は君を欲していたんだ」。
冬に最もいただきたい、日野菜と茸の白味噌椀。
京都「なかひがし」