名前は「腐った鍋」という。
ありがたくない名前のこの料理は、オジャ・ポトリーダという、カスティーリャ・イ・レオン地方の郷土料理である。
豚肉、豚耳、チョリソー、インゲン豆を水だけでコトコトと、4時間ほど煮込んでいく。
その汁は、豚脂のコクとコラーゲンの甘みが溶け込み、肉の滋味とチョリソーの香りが行き交い、白インゲン豆の優しい甘みに満ちている。
一口すすって、ふうっと息をつき、体の中にゆっくりと滋養が満たされていくのを待つ。
微かな微かな幸せが、体の奥底からせり上がってくるのを感じたら、豆を肉を口にする。
豚のすべてを吸い込んだ豆が舌の上でつぶれ、豆の甘みをまとった豚耳がコリっと歯の間で弾む。
お願いです。今日みたいな寒い日に、僕はあなたが、いやこの料理が必要なんです。
冬風に殴られ、忘年会続きで弱った腐りかけた体を、再生するために。
代々木八幡「アルドアック」にて。
「腐った鍋」
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