肝をゆっくり炒める。
骨で採ったダシを入れる。
トマトを入れて、フードプロセッサーにかける。
こうして一日かけて作られたスープ。
そこに、グリルした身を置く。
こうして書けば簡単だ。
しかし、そのスープは塩が舌に当たることがない。
トマトは出すぎることなく、うまみがそっと魚の滋味を支えている。
ふわりと舌に広がる、肝のコク。
舌を惑わす、複雑な海の豊穣。
真ゾイの身を突き崩して、スープにからめ、口に運ぶ。
歯の間で、舌の上で、身が弾け、命の猛りが顔を出す。
ちゅるり、ちゅるり。
皮と身の狭間から滲みでる、逞しき味が、スープと入り混じって、色っぽい。
見事なバランス。
黄金比率。
単純な料理に込めた、精緻な構築。
その完璧に、塩梅の凄みに、ただただ押し黙った。
遠くを見つめ。「ふうっ」と息を吐いた。
そして
同席者とうなづきあい、笑いあった。