本格的な中国料理なら、都心だネ。
と思っているあなた、最近の事情は、ちょいと違うんですよ。若手料理人が独立し、都心から外れた地に、店を構えることが増えてきたのである。
例えば「蜀彩」だ。
数々の店を経て、四川で学んだ村岡氏の料理は、かの地の熱き香りに溢れている。
「鯛頭の唐辛子漬物のせ蒸し」は、辣と麻が火花を散らす中、複雑な香りが鼻腔に抜け、熟れた塩気が鯛の甘みを持ち上げる。
その他、風味のバランスが見事な「麻婆豆腐」、
芽菜と豚バラを蒸した「咸焼白」、板の技がさえる「豚マメの湯引き山椒ソース」など、四川への情熱を盛り込んだ皿が数多く並び、メニューを開くだけで、涎が止まらなくなるのだ。
場所柄、海老チリや八宝菜、担担麺など、定番料理の注文が大半という現状だが、なあにしばらくすれば、村岡氏の想いがお客さんに浸透して、変わっていくはずだ。
東高円寺の「圳陽」もしかり。ピーシェン豆板醤とにんにくの茎を使った麻婆豆腐が、昼なら八百円。
香ばしい皮としっとりした肉の対比がたまらぬ「脆皮鶏」や、「スルメイカの馬来醤炒め」など、ここもまた全品制覇をしたくなる。
食いしん坊なら、今、沿線中華を見逃すな。