<油道10>エビフライが止まらない

食べ歩き , 寄稿記事 ,

相当な自信である。

店頭脇には、紺地に大きな白文字で「自信 えびフライ」と記した、大きなのぼり。

ショーウィンドウに燦然と飾られる、えびフライの大写真。

そこには、「自信の一品 本物の味をお楽しみください」とある。

ここは巣鴨地蔵通り商店街、通称おばあちゃんの原宿にある定食屋。「ときわ食堂」である。

はたしておばあちゃんは、えびフライが好きなのか?

フライよりぶりの照り焼きや魚の煮付けの方が好きだろうになあと考えながら、店に入った。

「いらっしゃいませっ」。

おおっ、活気がある。

働くのは二十代の男女で、明るく快活だ。

一方お客さんは、おばあちゃんとおじいちゃんが大半である。

店員とお客さんの年齢格差が凄まじい。

食べられているものをみると、やはり魚の塩焼き定食や、ぶり照り定食を食べている人が多い。

だが、まぐろぶつ切で、昼から日本酒をやるおじいさんもいれば、えびフライ定食にまぐろ納豆を頼むおばあさん、レバニラ定食にちくわ天ぷらを食べているおじいさんといった、剛の者もいる。

56歳だがこの店では若造。負けてはいられない。

「えびフライ定食」(980円)に、アジフライ一匹(150円)、ポテトサラダ(200円)を頼んだ。

えびフライが運ばれた。

おおっ、えびが皿の上で屹立しているではないか。

天に向かって尻尾を立て、きりりと背筋を伸ばしているではないか。

約十七㎝の堂々たるお姿。

まずはそのままで食べてみる。箸でつかむと持ち応えする重さのそいつに、かぶりつく。

サクッと衣が音を立て、歯が海老にめり込んだ。

ほんのり滲み出る海老の甘み、衣の香ばしさに入り混じる海老の香り。

数回噛んでいると、自然と微笑みが浮かんでくる、穏やかなおいしさだ。

次に塩とレモン。

海老の甘みが、先ほどより際立つ。

お次はマヨネーズをもらい、レモンを絞り込んでフライを浸け、食べてみた。

ああこれは、ご飯を呼ぶ味である。

すかさずご飯をかきこめば、質が高く、なかなか良い。

豆腐の味噌汁も、香り高く優しい味わい、糠漬けも、真っ当な味である。

最後にソースをかけりゃ、またまたご飯を呼ぶ。

ソースの甘辛さにも負けないえびの存在感がある。

大衆食堂として980円は高い方かもしれないが、えびといい、ご飯やみそ汁といい、誠実さがにじみ出ていて、気持ちがいい。

ついでにアジフライも、身がふっくらと厚く、確かな味わいがあるものだった。

この定食屋を、おじいちゃんやおばあちゃんだけに占領させておくのは、もったないぞ。