噛むという行為は無となり、歯は消えてしまった。
そこにパンとビーフカツは確かに存在する。
しかしその境界線がない。
柔らかなパンとシャトーブリアンのカツが抱き合い、一つの宇宙となっている。
前歯がパンとカツに吸い込まれる。
噛んだ瞬間に、カツサンドなど存在しなかったかのように、上下の前歯が噛み合ってしまう。
パンの優しい甘みと肉の滋味が渾然となって、味の厚みを作り出し、舌を包み込む。
その美味しさは、シャトーブリアンの繊細な肉質に合わせてパンを特注した、佐藤さんの肉への敬意である。
カツサンド
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